銘石である所以(ゆえん)
世界に誇る最高級石材、庵治石。庵治石が銘石と呼ばれるには確たる理由があります。
庵治石が単なる石材としての枠を超え、輝きを放つ魅力をご紹介しましょう。
庵治石・御影石とひとくちに言っても、様々な種類があります。岩石は大きく3つに分類され、その内の「火成岩」に属するのが花崗岩。地殻の奥深くで生成される花崗岩は硬くて耐久性に優れていることから、墓石などによく使用されます。
庵治石は花崗岩の一種で、そのキメの細かさ、光沢、その石目の美しさが三位一体となった風格は、その昔より最高級の石材と称えられ、様々な石材加工製品に利用されてきました。特に墓石、彫刻品、灯篭等に用いられ、世界最高級の銘石として知られています。また庵治地方は日本三大石材産地と呼ばれ、庵治石は最高級墓石として知られています。
優美唯一無二の模様“斑(ふ)”
庵治石にも表情があるのをご存知ですか?種類や質によって、同じ模様はふたつとありません。庵治石の表面を見ると、ふんわりとしたまだら模様が浮かんでいるのがわかると思います。これは、主成分である石英と長石に黒雲母が含まれているために表れる珍しい模様で、「斑(ふ)」と呼ばれます。研磨することで石表面の黒雲母はより緻密に。潤いをたたえたような美しい濃淡が生まれます。また、表面が二重のかすり模様のように見える現象を「斑が浮く」といい、世界の石材でも類をみない、庵治石だけに見られる特性です。この美しさが、最高級石材・庵治石最大の魅力といえるでしょう。
品格本物だけに許された称号
御影石は鉱物の結晶が集まってできています。庵治石は含有する構成物質の大小により、大きく庵治中目石、庵治中細目石、庵治細目石に分類されます。その中でもさらに庵治中目石、庵治中細目石、庵治細目石上級、庵治細目石特級、庵治細目石黒口極上というランクが付けられます。目の細かさ、斑(ふ)の浮き具合によってランクが分かれており、中でも庵治細目石黒口極上は特にきめが細かく斑の浮き具合が美しいものほど上質とされ、最高級墓石材とされています。庵治細目石は磨くと瑞々しく重厚な艶を帯び、その風格は格別です。
強靭二百年先もなお美しく
庵治石は美しさを長く保つことでも評価されています。庵治石は結晶の粒子が細かいため、結晶の膨張・収縮率、水の浸透率が極めて低い御影石です。つまりは水を吸わず風化に強いのが魅力で、また、黒雲母の中の鉄分が極めて少ないため変色を起こしにくいことも大きな特徴であり、庵治石の魅力です。
優れた硬度
石の硬さを分類する硬度(モース硬度)でみると、庵治石は硬度7。水晶と同じ硬さに値します。鉱物の結晶が緻密で強いため石の組織全体が締まっており、ほかの石材よりも硬いのです。地質学的に中生代白亜紀頃(約8000万年前)に形成された比較的新しい花崗岩であるため、特に外国産花崗岩に比較してみると時間の経過による劣化の程度が少ないことと、長石・石英・雲母などの鉱物の結晶の結合が緻密で強く、石の組織全体が締まっており高い硬度を持っています。
硬くてノミが立ちにくく、加工には手間、時間を要しますが、その反面、細かい細工や彫刻には最適で文字を彫っても見やすく、見映えが良く映ります。
鉱物の硬度(モース硬度) | ||
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硬度 | 鉱物 | 同じ硬度の主な物質 |
1 | 滑石 | - |
2 | 石膏 | アスファルト |
3 | 方解石 | 金、銅、セメント |
4 | 蛍石 | 石灰石、大理石 |
5 | 燐灰石 | 石綿、白銅 |
6 | 正長石 | 長石 |
7 | 石英 | 花崗岩、庵治石 |
8 | トパーズ | - |
9 | コランダム | - |
10 | ダイヤモンド | - |
※数値が大きいほど硬度が高い
出典:日本石材産業協会『墓石用石材規格カタログ』
水に強い
石の吸水率 | |
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庵治石細目 | 0.19% |
庵治石中目 | 0.20% |
外国材の細目石 | 0.28% |
庵治石の風化は、結晶の間に入った水が凍ったり溶けたりすることが大きな原因。花崗岩は異なる膨張率をもつ結晶でできているので、結晶の間に隙間ができやすいといわれます。しかし、庵治石は結晶が細かいため、膨張・収縮率が極めて低く、水を吸いにくいのです。庵治石のお墓が風雨に長年さらされてもなお美しい理由はそのためです。
劣化に強い
一般的な石材は月日とともに変色が進み、赤茶色になったり艶が消えてしまったりします。庵治石の場合、経年劣化や化学変化に強く、酸性雨の影響を受けにくいという特性を持っています。表面が溶けて形や彫刻が崩れてしまうことがほとんどありません。庵治石のお墓は年月を経てもなお、建立時の姿を保つことが出来ます。
繊細強靭さ故に叶う加工
強靭さをもつからこそ、繊細な表現が叶います。水晶と同じ硬度をもつ庵治石は崩れにくく、細かな細工に最適。蓮の花びら一枚一枚の表現も活き活きと、文字を彫っても見映え良く仕上がります。
一方でノミが立ちにくく、高度な技術が必要とされる難しさも。加工には多くの手間と時間を要します。本当に良い庵治石には、確かな熟練の技術を持った石職人が欠かせません。
世界に誇る庵治石の産地として栄えてきたこの地で、オールストーンの石職人は庵治石とまっすぐ向き合い、その加工技術を磨いてきました。石材の中でも加工が難しいとされる庵治石と対話を重ね、庵治石の優れているところを知り尽くしているからこそ、豊かな表現が出来ます。
大切な人を永遠にお祀りする墓石には、オールストーンの石職人が確かな技術がお応えします。
希少選びぬかれた良石
年間に約30万トン産出される庵治石のうち、墓石や灯籠など製品になるのは約3%。そのほかは建築材や庭石に使われます。山が険しく石が採りにくいことや良質の原石が少ないことに加え、斑の美しさを揃えて採るのが極めて難しいためです。
他の丁場に比べて岩盤に入る亀裂が非常に多いので、同じ丁場でも少し場所が変わるだけで採れる庵治石の質が変わってきます。選び抜かれた庵治石だけが墓石・灯篭などの最高級庵治石製品となることを許されるのです。